掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症に似ているけれど違う病気は?

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏に無菌性の膿疱ができる病気ですが、見た目が似ている他の皮膚病があります。そのため自己判断は禁物で、皮膚科医にきちんと診断してもらうことが大事です。ここでは、掌蹠膿疱症の診断方法や、症状が似ている別の病気にはどのようなものがあるのかを解説します。

手のひらを観察

掌蹠膿疱症の診断はどのようにするの?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は一般的にはなじみのない病名ですが、皮膚科医にはよく知られた病気です。よくある典型的な皮膚症状が出ていれば、見ただけでおおよその診断を付けることができます[1]。

典型的な皮膚症状とは、以下のようなものです。

  • 手のひらや足の裏にかゆみを感じる
  • かゆみが出た2~3日後に1mm程度の膿疱が出る
  • 膿疱は白~黄色で、群がり集まっているように見える
  • 皮膚の赤み(紅斑)、角質の異常蓄積(鱗屑)や剥離(痂皮)が混在

しかし、典型的ではない症状が出る人もいます。通常は両手足に出るのに片側にしか出なかったり、手もしくは足にしか出なかったり、水疱(水ぶくれ)や多汗がみられることもあります。また、受診時には手足以外の場所(膝、下腿、おしり、肘など)にしか症状が出ていなくて、しばらく経ってから手足に膿疱ができてくるというケースもあります[1]。

こういった典型的ではない症状の場合には、掌蹠膿疱症とはっきり分かるまでに時間がかかってしまうことがあります。「何の病気か早く知りたい」と気持ちが急くのは無理もありませんが、確実な診断をつけて適切な治療を行うためには時間が必要な場合もあることを理解しましょう。

※掌蹠膿疱症の症状について詳しくは『掌蹠膿疱症で起こる症状を写真を使って解説』をご覧ください。

掌蹠膿疱症には似て非なる病気ってなに?

掌蹠膿疱症は皮膚科医にとってそれほど診断が難しい病気ではありませんが、似て非なる病気もあるので、それらを除外しながら慎重に診断を進めていきます。ですから、一般の方がネットや本で調べて「自分の症状は掌蹠膿疱症に違いない!」と思っても、実は別の病気だったということは十分にあり得ます。病院を受診して医師にきちんと診断してもらいましょう。

掌蹠膿疱症に症状が似ている別の病気には、下記のようなものがあります。

  • 白癬
  • 汗疱(異汗性湿疹)
  • 手足口病
  • 湿疹・皮膚炎
  • 好酸球性膿疱性毛包炎
  • 急性汎発性膿疱性細菌疹
  • 乾癬

以下、それぞれの病気と掌蹠膿疱症との違いを簡単に解説していきます。

白癬

白癬とはいわゆる「水虫」のことで、白癬菌(水虫菌)による感染症です。白癬は身体のさまざまな部位で悪さをしますが、足の裏に複数の水疱や膿疱を作ってしまった場合は、掌蹠膿疱症のように見えることがあります。

掌蹠膿疱症か白癬かを見極めるもっともよい方法は、水疱の一部を切り取って顕微鏡で見てみることです。もし白癬であれば、ほぼ100%白癬菌の姿を確認することができます。逆に白癬菌の姿が見えないようであれば、白癬でない可能性が高いといえます。

もう一つの見分けるポイントは、水疱を作るタイプの白癬は春~夏にかけて発症し、秋には自然に治ることが多いので、そういうパターンを繰り返している場合は白癬である可能性が高いです。反対にそのような季節的な変化がないようなら、白癬でないかもしれません[2]。

汗疱(異汗性湿疹)

汗疱は手のひらや足の裏に小さな水疱が多数できる病気です。この水疱が膿疱に変わることがあり、この場合は掌蹠膿疱症との見分けが難しくなります。原因ははっきりとはわかっていませんが、一部の患者では食品や歯の詰め物に含まれる金属(ニッケル、コバルト、クロムなど)や食品添加物、防腐剤、薬剤などのアレルギーが関係しているようです。原因を調べるためにパッチテストを行うことがあります[3]。

手足口病

手足口病はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどによる感染症です。小学校に上がる前の子供に多い病気ですが、大人がかかることもまれにあります。灰白色の水疱が手のひらや足の裏などに出ます。この症状だけを見ると掌蹠膿疱症かなと思うかもしれませんが、手足口病はその名の通り、口にも症状(痛みを伴う口内炎)が出ることが多いのが大きな違いです。

湿疹・皮膚炎

湿疹・皮膚炎は、何らかの原因で皮膚が刺激を受けて起こる発疹のことです。まずは赤み(紅斑)や小さなブツブツ(小丘疹)ができて、かゆみが起こります。小さな水疱ができることもあります。このような症状が手のひらや足の裏に起こると、掌蹠膿疱症と見分けにくい場合があります。

手のひらに湿疹が起こる病気として有名なのは、水仕事の多い人(美容師、料理人など)がなりやすい「主婦湿疹」(手湿疹)があります。また、足の裏についても、かぶれるなどして湿疹が起こることは十分にあり得ます。

好酸球性膿疱性毛包炎

好酸球性膿疱性毛包炎は、免疫細胞の一種である好酸球が悪さをして、顔面や胸、背中、腕の毛が生える部分(毛包)がある部分に丘疹(ぶつぶつ)や膿疱ができる病気です。しかし、この病気の患者の約1割で手のひらや足の裏から症状が出始めるといわれており、この場合は掌蹠膿疱症との見分けが難しくなります。手足以外にも症状がないかどうかをしっかり確認し、場合によっては皮膚の一部を切り取って詳しい検査を行うこともあります[4]。

急性汎発性膿疱性細菌疹

急性汎発性膿疱性細菌疹は、上気道炎などの感染症が起こった後に、手のひらや足の裏のみならず、手足の甲や体幹、四肢にも膿疱が拡がっていく病気です。手足にできる膿疱は掌蹠膿疱症にかなり似ていて、掌蹠膿疱症に合併することがある胸部の関節炎を起こすこともあるので、皮膚科医としても迷いやすい病気だそうです[1]。

この2つの病気の違いは、掌蹠膿疱症が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性的に続いていく病気であるのに対して、急性汎発性膿疱性細菌疹は急性の経過をとり、治った後は再発しない点です。ただ、急性汎発性膿疱性細菌疹でもまれに再発することがあるそうなので、慎重に見極めていく必要があります[5]。

乾癬

乾癬は皮膚の表皮細胞の新陳代謝(ターンオーバー)がスピードアップしすぎてしまい、不完全な角質が積み重なって特徴的な皮疹ができる病気です。乾癬は頭や四肢、体幹によく出るのですが、まれに手のひらや足の裏に出ることがあります[6]。この場合は掌蹠膿疱症と見分けることが必要になります。

なお、日本では掌蹠膿疱症と乾癬は違う病気と位置づけていますが、欧米の一部地域では、掌蹠膿疱症と乾癬の一部が同じ病気として取り扱われています。まだ議論のあるところですが、研究から得られた成果からは「掌蹠膿疱症と乾癬は別の病気」と考えるのが妥当なようです[7]。ただし、この2つの病気が起こるメカニズムの一部に共通している部分があります。このことから、乾癬で使用されている薬を掌蹠膿疱症にも応用することができるのではないかと期待されています。

※掌蹠膿疱症の新たな治療について詳しくは『掌蹠膿疱症の新たな治療薬「生物学的製剤」』をご覧ください。

参考文献

  1. [1]山本俊幸. 掌蹠膿疱症の臨床:掌蹠および掌蹠外の皮疹, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1018-1021
  2. [2]渡辺晋一. 足白癬, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1095-1096
  3. [3]相葉節也. 皮膚科症候学. 標準皮膚科学. 第10版. 医学書院 2013; 116
  4. [4]梶井崇行ほか. 好酸球性膿疱性毛包炎, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1092-1094
  5. [5]出月健夫. 急性汎発性膿疱性細菌疹(AGPB), Visual Dermatology 2012; 11(10): 1018-1021
  6. [6]伊佐見真実子ほか. 手に限局した乾癬, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1089-1090
  7. [7]照井正. 羅針盤, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1015

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