掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症で起こる症状を写真を使って解説

掌蹠膿疱症ではどんな症状が出るのでしょうか? 手のひらや足の裏に起こる皮膚症状がメインですが、爪や足の甲、膝、下腿などにも症状が出ることがあります。また、約1割の患者では骨関節症状(前胸部の痛みなど)が出ることが知られています。さらに、腎臓や血管の病気などを合併するケースもあります。ここでは、掌蹠膿疱症で起こる症状について詳しく解説します。

足の症状を確認

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)はその名の通り「手のひら(掌)や足の裏(蹠)に無菌性の膿疱ができる病気(膿疱症)」です。ただし、手のひらや足の裏だけではなく、爪や足の甲、膝、下腿、おしり、肘などの皮膚にも症状が起こることがあります。それぞれについて詳しくみていきましょう。

掌蹠(手のひら、足の裏)に起こる症状

掌蹠膿疱症のもっとも特徴的な症状は、手のひらや足の裏に小さな(1mm程度の)膿疱がたくさんできて、皮膚の赤み(紅斑)、角質の異常蓄積(鱗屑)、角質が剥がれる状態(痂皮)も一緒に見られることです。これらの症状が数か月単位で良くなったり悪くなったりを繰り返します[1]。

掌蹠膿疱症の足の写真

※上記の写真は米田明弘氏提供。手の症状については日本皮膚科学会の「皮膚科Q&A」を参照ください

膿疱っていったい何?

膿疱というのは、白~黄色に見える液体状のものが皮膚の下にあって膨らんでいる状態のことです。よくある水ぶくれ(水疱)には透明な液体が入っていますが、その液体が膿になっているので膿疱と呼ばれます。

一般的に膿というと、転んでケガをした後に傷口が化膿して出てくる黄色い汁というイメージがあるのではないでしょうか。この場合は傷口に細菌が感染して、免疫細胞がそれと戦った結果としてできるものなので、膿のなかには細菌や免疫細胞、はがれた周囲の皮膚組織などが含まれています。ですから透明ではなく色が付いて見えるのです。

しかし、掌蹠膿疱症でできる膿疱には、免疫細胞はいますが細菌はいません。こういった膿疱のことを「無菌性膿疱」といいます。どうして細菌がいないのに免疫細胞だけがあつまって膿疱を作ってしまうのか不思議ですよね。この疑問に対する答えは『掌蹠膿疱症の原因が皮膚じゃないって本当!?』をご覧ください。

どんな風に症状が現れるの?

掌蹠膿疱症の症状の出方は患者によって異なりますが、膿疱ができる2~3日前にかゆみを感じる人が多いようです。膿疱だけでなく、皮膚が赤くなったり(紅斑)、角質が異常に蓄積してガサガサした感じになったり(鱗屑)、その角質に滲出液や膿などがこびりついて塊状に剥がれる(痂皮)状態が混在しているのが、掌蹠膿疱症でよく見られる典型的な症状です。

これらの症状は両手両足にできることが一般的なのですが、なかには手または足だけにしか症状が出ないケースや、片側の手足にしか出ないケースもあります。

また、手のひらや足の裏に膿疱だけでなく小さな水疱(色が透明の水ぶくれ)ができたり、通常よりも多く汗をかいたりする症状(多汗)も一緒に起こることがあります。また、皮膚の赤みが強く、作られ過ぎた不完全な角質が白い塊状になって全体にこびりついているようになることもあります。

このように、同じ掌蹠膿疱症でも人によって症状の出方や重症度が異なります。

掌蹠(手のひら、足の裏)以外に起こる皮膚の症状

掌蹠膿疱症はその名の通り、手のひら(掌)や足の裏(蹠)に症状に出るのが一番の特徴なのですが、掌蹠以外の部位にも症状が出ることがあります。

例えば、爪の下に小さな黄色い膿疱が出ることがあります。爪の下なので膨れては見えませんが、黄色いスポット(点)として確認することができます。また、爪全体が黄色くなってボロボロに変形することもあります。

他にも、足の甲、膝、下腿、おしり、肘などに、白くポロポロと剥がれ落ちる角質の塊(落屑)を伴う茶褐色斑や小さな膿疱ができることがあります。これらの症状はずっと続いて現れる場合(慢性型)と、急に現れて拡大していくけれども一過性で消えていく場合(急性型)の2パターンがあります。

もう一つ、掌蹠膿疱症で見られる特徴として、靴で擦れる部位(かかとや小指など)や、下着のゴムで締め付けられるようなところに落屑を伴う紅斑などができる場合があります。これは「皮膚に刺激が加わった部分に症状が出る」という現象であり、ケブネル(ケブナー)現象と呼ばれています。

骨や関節に痛みが出ることもある

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏にできる膿疱などの皮膚症状がメインなのですが、骨や関節の痛みが起こることもあります。皮膚の病気なのに意外ですが、掌蹠膿疱症の患者の約10%に骨関節炎が合併するといわれています[2]。

痛む場所は、胸鎖肋骨部(下の図の赤い部分あたり)がもっとも多いです。この部分が腫れて、ひどく痛むことがあります。この部分を押すと痛みが増し、皮膚が赤くなったり熱っぽく感じたりすることもあります。

掌蹠膿疱症で関節炎が起こりやすい部分

痛みの程度は、特に発病した初期に強く、だんだん軽くなってきます。そのまま数年以内に症状が無くなる人もいますが、軽快と再発を繰り返してしまう人もいます[2]。

骨関節炎は皮膚の症状ではないので、皮膚科医に言うべきことではないかな、と遠慮してしまう人がいるかもしれません。しかし、掌蹠膿疱症と骨関節炎の合併はよくあることで、治療を検討する上でも必要な情報ですので、医師に伝えるようにしてください。

掌蹠膿疱症で起こる合併症って?

このように皮膚だけではなく骨や関節にも症状が起こってしまうのはなぜなのでしょうか。それは「病巣感染」という原因が関係しています。

少しややこしい話なのですが、病巣感染とは、扁桃腺や歯などに細菌が感染している(病巣がある)ことが原因で、そこから離れた場所(手足や骨関節、腎臓など)に症状が引き起こされることを指す言葉です。例えるなら、遠く離れた南米で地震が起こると、日本を含む太平洋に浮かぶ国々に津波が押し寄せるようなものです。

この病巣感染で起こる病気の一つが掌蹠膿疱症で、その他にもSAPHO症候群やアナフィラクトイド紫斑、IgA腎症といった病気もあります。つまり、病巣感染がある場合は、掌蹠膿疱症だけでなく、原因が共通しているこれらの病気も合併することがあるということです。逆に、病巣感染をなくせば、掌蹠膿疱症も合併症も一緒に治ってしまうということがあり得ます。以下、これらの合併症で起こる症状について詳しくお伝えします。

骨関節の痛みを引き起こす「SAPHO症候群」

前述した骨関節炎も、病巣感染が関係して起こる掌蹠膿疱症の合併症のひとつです。専門用語で「SAPHO症候群」と呼ばれることがあります。

SAPHO症候群は(滑膜炎synovitis、座瘡acne、膿疱症pustulosis、骨増加症hyperostosis、骨炎osteitis)の頭文字を取って名付けられています(掌蹠膿疱症に合併した場合は掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)と呼ばれることもあります)[2]。

SAPHO症候群でもっとも多い症状は、前述したように、胸鎖肋骨部の腫れと疼痛です。また、肩甲骨のあたりまで痛みが広がることもあり、肩や腕を動かしにくくなって日常生活に支障が出ることもあります[2]。

この胸鎖肋骨部の他にも、脊椎や仙腸関節(骨盤にある関節)、肘や膝、指の関節などを冒し、腰痛や背部痛、起床時のこわばりなどを引き起こすことがあります[3][4]。

細小血管が壊れる「アナフィラクトイド紫斑」

アナフィラクトイド紫斑は、ヘノッホ・シェーンライン紫斑やアレルギー性紫斑病とも呼ばれます。子供に多い病気として知られていますが、掌蹠膿疱症にかかった大人に合併することもあります[5]。

この病気にかかると、下肢に点状の紫斑(青あざ)が生じます。これは病巣感染によって「IgA免疫複合体」という物質が体内にでき、それが皮膚の細小血管に沈着することで起こります。沈着した場所では炎症が起き、その血管が壊れてしまうことで血液が組織に漏れ出します。この皮下出血が点状の紫斑に見えるのです。

掌蹠膿疱症にアナフィラクトイド紫斑が合併したときは、手足の皮膚症状が悪化し、下肢には紫斑だけでなく膿疱や血疱、水疱、びらん、潰瘍などさまざまな皮膚症状が出ることがあります。SAPHO症候群を合併する率も高く、紫斑の発症時には関節の痛みが悪化することが多いようです。

アナフィラクトイド紫斑で問題になるのは皮膚の症状だけではありません。IgA免疫複合体は皮膚の血管だけでなく、腎臓の血管にも沈着し、腎機能を障害することがあるので注意が必要です。

自覚症状に乏しく気づきにくい「IgA腎症」

IgA腎症は、腎臓のろ過機能を担う糸球体にIgA免疫複合体が沈着してその機能を障害し、腎機能が低下してしまう病気です。腎機能が低下すると、血液中の老廃物を尿として外に出しにくくなり、身体にとって非常に良くない状況になってしまいます。

掌蹠膿疱症とIgA腎症の合併はまれ(約1.5%)ですが、発症したのに気づかずに放置してしまうと悪化して腎不全となり、人工透析をしないといけなくなる可能性がありますので、いかに早期に発見するかが大事です[5]。しかし、このIgA腎症はかなり悪化するまでは自覚症状が出ないのが問題です。この病気を見つけるきっかけは、尿検査で蛋白尿や血尿の判定が出たことが多いです。もし健康診断などで腎機能の項目に異常が出た場合は、きちんと医師に伝えるようにしましょう。

参考文献

  1. [1]山本俊幸. 掌蹠膿疱症の臨床:掌蹠および掌蹠外の皮疹, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1018-1021
  2. [2]大久保ゆかり. 経過中注意すべき合併症:2)膿疱性関節炎,胸鎖関節炎(SAPHO症候群)の臨床と診断, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1030-1031
  3. [3]木村友厚. 掌蹠膿疱症性関節骨炎(PAO), 関節外科 2012; 31(増): 122-124
  4. [4]小林里実. 膿疱性骨関節炎、胸鎖関節炎(SAPHO症候群)の治療:ビスホスホネートを含む, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1082-1083
  5. [5]室 繭子. 経過中注意すべき合併症:1)アナフィラクトイド紫斑,IgA腎症, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1024-1028

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