掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症になぜ金属アレルギーが関係するの?

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏に膿疱ができる皮膚の病気で、その原因の一つに「金属アレルギー」があります。そう聞くと、指輪をたくさん付けている人がなりやすいのかなと思ってしまいがちですが、そうではありません。実は「口の中にある金属」のアレルギーであることが多いのです。ここでは、掌蹠膿疱症と金属アレルギーの関係について解説します。

歯科金属

金属アレルギーが原因の掌蹠膿疱症ってどのくらいいる?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の原因(悪化要因)は大きく分けて3つあります。

  • 金属アレルギー

このように、金属アレルギーも掌蹠膿疱症の原因の一つとして知られていますが、全体から見るとその割合は少ないといわれています[1][2]。とはいえ、原因となっている金属を除去することで掌蹠膿疱症の症状が明らかに改善した例もあります[3]。人によっては、金属アレルギーかどうかを調べることで掌蹠膿疱症の有効な治療につながる可能性があるようです。

なぜ金属が原因で掌蹠膿疱症になる?

金属アレルギーといえば、例えばネックレスでかぶれて首の周りに湿疹ができたり、ピアスをしたところが腫れて膿が出てきたり…といったケースをイメージされる人が多いのではないでしょうか。

そのイメージを掌蹠膿疱症に当てはめると、手のひらや足の裏に金属が触れる機会が多い人が、金属アレルギーによる掌蹠膿疱症になりやすいのではないかと思いますよね。

しかし、掌蹠膿疱症を引き起こす金属は、必ずしも手足に触れているとは限りません。実は一番多いのは「歯科金属」、つまり虫歯の治療などで使った歯の詰め物の中に含まれている金属が原因になっているケースです。こういうケースでは、金属を含まない詰め物に取り替えることで掌蹠膿疱症の症状を軽減させることができるかもしれません。

歯の金属がなぜ手足の症状を引き起こす?

歯の詰め物に含まれている金属は、ごくわずかですが徐々にイオンの状態で溶け出していきます。この金属イオンは口や喉、消化管から体内に吸収され、体内にあるタンパク質と結合し、やがて排泄されていきます。

ただし人によっては、免疫細胞がこの「金属イオン+タンパク質」を見つけて「敵」だと認識してしまうことがあります。一度このように認識してしまうと、その後に歯の詰め物から金属イオンが溶け出してくるたびに、それを排除しようとアレルギー反応が起こります。これが金属アレルギーの起こる仕組みです[4]。

ややこしいのは、歯の詰め物そのものは金属のままで、タンパク質と結びついているわけではありませんから、歯ではアレルギー反応が起こりにくいことです。詰め物から溶け出した金属イオンが結び付くタンパク質の種類によって、どこでアレルギー反応が起こるのかが左右されます。

掌蹠膿疱症の場合は、歯の詰め物に含まれる金属が溶け出して、結合したタンパク質が偶然にも手足に多いタンパク質だった(もしくは形が似ていた)ために、手足でアレルギー反応が出たものと考えることができるかもしれません。しかし現在のところ、詳しいメカニズムは解明されていません。

金属アレルギーはどうやって調べるの?

金属アレルギーかどうかを調べるには「パッチテスト」という検査を行います。金属を含む液体や軟膏を正常な皮膚に塗布して、48時間後、72時間後、1週間後に赤みや水疱などが出るかどうかでアレルギーの有無を調べる検査です。

パッチテスト

金属には多くの種類がありますから、それぞれを1つずつテストするためには面積が必要です。そのため、上の写真のように背中の皮膚で行うことが多いです。一番上には銅(Cu)、その下にニッケル(Ni)、その下は水銀(Hg)……というように、どこに何の金属を塗ったか分かるようにしておきます。数日後に確認すると、アレルギーがある金属を塗った部分には赤みや水疱など皮膚に変化が見られますが、アレルギーがなければ皮膚の変化は出ません。このようにして金属アレルギーの有無を判定します。

どの金属が問題なの?

掌蹠膿疱症では、特定の金属だけが問題というわけではなく、ニッケル、コバルト、クロム、水銀、スズ、白金、イリジウムなど、色々な金属が原因となり得ます。歯の詰め物によく使われる金やパラジウムが陽性になることもあります[4]。

パッチテストは必ずやるべき?

冒頭で解説した通り、金属アレルギーによる掌蹠膿疱症はそんなに多くなく、全体の数%です。そのためすべての掌蹠膿疱症の患者がするのではなく、金属アレルギーの可能性が高そうな人だけを選んで行うようです。例えば、今までに装飾品や時計などでかぶれた経験がある人、歯の詰め物がいくつもある人、喫煙をする人、治療をしてもあまり効かない人などです[5]。

このように、パッチテストをするかどうかは患者それぞれです。掌蹠膿疱症では、金属アレルギーのほかにも病巣感染や喫煙などの原因(悪化因子)となり得るものがありますので、医師は可能性の高いものから順番に確認をしていきます。一度の診察ですぐに原因が分かることはまずありません。医師と二人三脚で一歩ずつ進みながら、治癒を目指していきましょう。

なお、金属アレルギーによる掌蹠膿疱症の対処法については『掌蹠膿疱症の悪化因子(原因)を取り除く処置』をご覧ください。

参考文献

  1. [1]小林里実. 病巣感染と掌蹠膿疱症, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1036-1041
  2. [2]山本明美. 掌蹠膿疱症における禁煙の重要性, 日本医事新報 2016; 4797: 57-58
  3. [3]高橋槙一. 掌蹠膿疱症の病因と治療, 歯科学報 2008; 108(5): 431-436
  4. [4]森山雅文ほか. 口腔扁平苔癬および掌蹠膿疱症の発症と金属アレルギーとの関連についての検討, 日本口腔外科学会雑誌 2012; 58(12): 718-722
  5. [5]鶴田京子ほか. 金属アレルギーと掌蹠膿疱症, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1052-1054

「掌蹠膿疱症を学ぶ」の関連情報