掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

喫煙者が掌蹠膿疱症になりやすいってホント?

掌蹠膿疱症とタバコには深い関係があります。なんと、掌蹠膿疱症の患者の8割以上が喫煙者なのです。タバコを止めるのは簡単なことではありませんが、禁煙すると症状がよくなることが知られています。禁煙外来などを利用したり、家族や周りの人にサポートしたりしてもらいながら、ぜひ禁煙に取り組んでください。ここでは喫煙と掌蹠膿疱症の関係について詳しく説明します。

掌蹠膿疱症に多い女性の喫煙者

喫煙者は掌蹠膿疱症になりやすい?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とタバコには、はっきりとした関連性があります。というのも、掌蹠膿疱症の患者の85%以上が喫煙者で、ヘビースモーカーが多いという事実があるからです[1]。

つまり、掌蹠膿疱症の発症のしやすさにはタバコが関係しているということです。実際に、喫煙している人では、喫煙したことがない人と比べて掌蹠膿疱症の発症リスクは74倍と非常に高くなります[1]。わかりやすく例えると、タバコを吸ったことがない人を1000人集めたときに掌蹠膿疱症を発症するのは1人しかいませんが、喫煙者だけを1000人集めると74人が発症するということです。

でも、掌蹠膿疱症の患者のなかにはタバコを吸ったことがない人もいるじゃないか、と思うかもしれません。確かに喫煙したことがなくても掌蹠膿疱症を発症することはありますが、そういう人は症状が軽いことが知られています[1]。

このように、タバコは掌蹠膿疱症の発症や重症度を左右する大きな要因なのです。

禁煙すれば掌蹠膿疱症は治る?

タバコは掌蹠膿疱症の大きな要因ですから、タバコは止めるに越したことはありません。実際に、禁煙すると症状が軽くなることが研究で示されています[2]。

この研究はスウェーデンのウプサラ大学で行われました(この大学は北欧最古の大学といわれ、多くのノーベル賞受賞者を輩出した権威のある大学です)。この大学病院の皮膚科に通う掌蹠膿疱症の患者のなかで、喫煙する人を対象として、タバコと掌蹠膿疱症の関係性を指導し、禁煙にトライする意思があるかどうかを尋ねました。約半分の患者が「1か月以内には禁煙する」と答えたそうです。

さて、それから3~6か月が経った後に得られた結果を下のグラフに示します。禁煙した人では、手足に新たに膿疱ができた数が明らかに減りました(21個から2個)。しかし、禁煙しなかった人では、膿疱の数が増えてしまいました(22個から37個)。

新たな膿疱ができた数

また、同じように紅斑(皮膚の赤み)の程度や面積などをスコア化して比較してみると、やはり禁煙した人では症状が改善していました(9.6から2.3に減少)。しかし、禁煙しなかった人は症状がほとんど変わりませんでした(7.0から7.8に微増)。

紅斑の程度

このことから、禁煙することで掌蹠膿疱症の症状が改善することが期待できるといえます。

どうして喫煙すると掌蹠膿疱症になるの?

これまでに述べてきたように、喫煙者は掌蹠膿疱症を発症しやすいことは明らかですが、どうしてタバコが掌蹠膿疱症を引き起こすのかという詳しいメカニズムについてはよく分かっていません。ここでは、掌蹠膿疱症によく似た病気である乾癬での研究成果も踏まえ、いくつかの仮説を紹介します[1][3]。

免疫システムの撹乱

喫煙は、身体の免疫システムに影響を及ぼします。

例えば、前線の司令官のような役割を担う「樹状細胞」という免疫細胞があります。この細胞には「ニコチン性アセチルコリン受容体」という受容体をもっています。タバコを吸うと、ニコチンが体内に入ってきてこの受容体と結合します。ニコチンが結合することがきっかけとなり、樹状細胞は周りの免疫細胞に攻撃命令を出してしまい、結果として炎症が起こります。

また、タバコに含まれる成分は「Th17細胞」と呼ばれる免疫細胞を増やすこともわかっています。Th17細胞は主に「好中球」という兵士に攻撃命令を出し、細菌や真菌と戦います。しかし掌蹠膿疱症では「手足に細菌がいるみたいだから攻撃しなければいけない」と免疫システムが勘違いをしています。このような状態で喫煙すると、勘違いしたTh17細胞が増えてしまい、その命令を受けて手足の皮膚に好中球が続々と集まり、やがて膿疱がつくられる…という流れを促進してしまう可能性があります。

ニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体

掌蹠膿疱症の患者の血液を調べたところ、ニコチン性アセチルコリン受容体を攻撃する抗体が見つかりました。これは、この受容体を「敵」と認識してしまっているということです。この受容体は手のひらや足に多いために、ここで炎症が起きて膿疱などの皮膚症状を引き起こしているのではないかという仮説があります。このように、自分の身体の一部なのに間違って攻撃してしまう抗体のことを「自己抗体」といいます。タバコを吸ってニコチンを身体に取り入れ続けることが、このような自己抗体を作らせるきっかけとなっている可能性があります。

角化細胞の変性

皮膚のなかでもっとも外側にあり、外部と接している部分が「表皮」です。「角化細胞」がこの表皮を作り出しているのですが、喫煙は、この角化細胞そのものの性質を変化させてしまっている可能性があります。つまり、タバコは表皮を作り出す細胞に影響を与え、キレイな皮膚を作り出す機能を阻害してしまうのです。

フリーラジカル

タバコの煙に含まれるフリーラジカル(活性酸素など)による「酸化」が、病気を悪化させるという説もあります。

※掌蹠膿疱症が発症する仕組みについて詳しくは『最近わかってきた掌蹠膿疱症の病態メカニズム』をご覧ください。

掌蹠膿疱症になったら喫煙すべき?

掌蹠膿疱症になったら禁煙を

このように、喫煙は掌蹠膿疱症の発症や悪化に大きくかかわっていますので、禁煙は必須です。この機会にぜひ禁煙にチャレンジしてみてください。タバコを止めれば、手足の不快な症状が軽くなっていくはずです。

とはいえ、禁煙はやろうと思ってすぐにできることではありませんよね。掌蹠膿疱症は皮膚科だけでなく、歯科、耳鼻咽喉科など複数のプロフェッショナルが協働して治していく病気です。この際、禁煙についてもプロの力を借りてしまいましょう。一人で頑張るより禁煙の成功率はぐっと上がるはずです。ウェブで「禁煙外来」と検索すれば、禁煙治療を行っているクリニックを探すことができます。もしくは掌蹠膿疱症の主治医に相談して、よい先生を紹介してもらってもいいでしょう。

参考文献

  1. [1]山本明美. 掌蹠膿疱症における禁煙の重要性, 日本医事新報 2016; 4797: 57-58
  2. [2]Michaëlsson G et al. The psoriasis variant palmoplantar pustulosis can be improved after cessation of smoking. J Am Acad Dermatol. 2006;54(4):737-8.
  3. [3]村上正基. 掌蹠膿疱症とニコチン性アセチルコリン受容体,kallikrein related peptidase(KLK)と鱗屑について, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1059-1063

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