掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

最近わかってきた掌蹠膿疱症の病態メカニズム

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏に膿疱ができる病気です。しかし、その原因(悪化要因)はタバコや扁桃腺、歯周病、歯の詰め物に含まれる金属など、手足ではない別の場所にあるというのですから、不思議ですよね。ここでは、なぜ掌蹠膿疱症の症状が手のひらや足の裏に起こるのか、その部位ではどのようなことが起こっているのかを分かりやすく解説します。

掌蹠膿疱症ではなぜ手足に症状が起こるの?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の症状が手のひらや足の裏で起こる背景には「エクリン汗腺」が大きく関係しています。汗腺は汗を作って出すという働きがあり、下の図で示したように管をゆるく巻いたような形をしています。

皮膚の解剖

この汗腺には「エクリン汗腺(小汗腺)」と「アポクリン汗腺(大汗腺)」の2種類がありますが、掌蹠膿疱症に関係していると考えられているのはエクリン汗腺の方です。

エクリン汗腺は手足に多い

よく興奮したときや緊張したときに「手に汗を握る」といいますよね。このときの汗はエクリン汗腺から出たものです。エクリン汗腺は全身のほぼすべての皮膚にありますが、手のひらや足の裏に特に多く分布しており、暑いとき、緊張・興奮したとき、辛いものを食べたときなどに汗を出します。

掌蹠膿疱症とエクリン汗腺の関係

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏に症状が出るので、その部位に多く分布するエクリン汗腺と関係があるのではないか、という議論は40年以上前からあったそうです。その後の研究の結果、2010年代になって「掌蹠膿疱症の症状とエクリン汗腺には大きな関係性がある」ということがはっきりしてきました[1]。

その証拠は、掌蹠膿疱症で膿疱がつくられる前にできる水疱の中に、エクリン汗腺が作り出す特徴的な物質(dermcidinなどの抗菌ペプチド)が含まれていることです。この物質はエクリン汗腺の細長い管の中でも一番外側に近い表皮内汗管に由来するものなので、この部分が掌蹠膿疱症の症状を起こすのに重要な役割を果たしていると考えられます。

どうしてエクリン汗腺で水疱ができるのかは明らかではありませんが、表皮内にできた水疱が大きくなるにしたがって、「好中球」という免疫細胞の一種が増えてきて、膿疱となっていくことが確認されています。

このことから、掌蹠膿疱症の症状が手のひらや足の裏に出る理由として、そこにエクリン汗腺が密集しているから、ということが言えそうです。

どうして好中球が集まって膿疱を作るの?

掌蹠膿疱症では、何らかの原因でエクリン汗腺から水疱ができて、そこに好中球が集まってきてしまうことで膿疱になってしまいます。では、どうして好中球が集まってきてしまうのでしょうか。このメカニズムには、近年になって発見された「Th17細胞」という免疫細胞が大きくかかわっていることがわかってきました。このTh17細胞と好中球の関係について、順を追って簡単に解説します。

掌蹠膿疱症の病態メカニズム

前線の司令塔「樹状細胞」がTh17細胞に助けを求める

皮膚は外部に接している部位ですので、外部からくる細菌などの病原体や異物から身体を守るために、免疫細胞がたくさん配置されています。その最前線にいて、司令塔の役割を果たすのが樹状細胞です。樹状細胞は異物を見つけると、本陣の方に移動して「こんな異物が入り込んできた」と報告します。

掌蹠膿疱症の場合は、本来なら身体に悪さをしない細菌をスルーできずに「敵」と勘違いしています。樹状細胞はこの細菌に似た物質の一部を本陣で提示し、この物質を排除するのに適した免疫細胞に助力を求めます。このときに応じるのがTh17細胞というわけです。

Th17細胞が角化細胞に命令を出す

樹状細胞から依頼を受けたTh17細胞は、表皮をつくる働きがある角化細胞にいくつかの命令を出します。その中の一つに「好中球を呼び寄せる」というものがあります。命令を受けた角化細胞は好中球に集合するよう命じる物質を出します。

細菌を食べる兵隊「好中球」が集まってくる

角化細胞に呼び出された好中球は、血液中から皮膚の局所へと次々と移動してきます。好中球には「細菌などを食べて消化する」という能力がありますので、細菌退治にはもってこいの免疫細胞です。

しかし、このときに呼び出されるのは細菌のいない手のひらや足の裏であり、せっかく好中球がきても、退治すべき細菌はいません。出撃命令は出ているので帰るわけにもいかず、好中球は活躍しないまま水疱内に溜まっていき、やがて膿疱となるのです(細菌がいないので「無菌性膿疱」と呼ばれます)。こうして掌蹠膿疱症の症状が現れます。

Th17細胞はタバコを吸うと増える!

このように、Th17細胞は樹状細胞の報告をもとに好中球を集める命令を出すという、掌蹠膿疱症の発症に大きく関与する免疫細胞です。このTh17細胞はタバコを吸うと数が増えることがわかっています[3]。喫煙者に掌蹠膿疱症が多いのは、これが一因となっていると考えられます。

※タバコと掌蹠膿疱症の関係について詳しくは『喫煙者が掌蹠膿疱症になりやすいってホント?』をご覧ください。

最近では、このTh17細胞の働きを抑えることによって掌蹠膿疱症を治すことができるのではないかという発想から、新たな薬が開発されています。詳しくは『掌蹠膿疱症の新たな治療薬「生物学的製剤」』をご覧ください。

参考文献

  1. [1]村上正基. 汗管と掌蹠膿疱症の関係(汗管内水疱の発達), Visual Dermatology 2012; 11(10): 1056-1058
  2. [2]藤田英樹. 乾癬における免疫制御療法. 日大医誌 2017; 76(1): 31-35
  3. [3]村上正基. 掌蹠膿疱症とニコチン性アセチルコリン受容体,kallikrein related peptidase(KLK)と鱗屑について, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1059-1063

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