掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症の悪化因子(原因)を取り除く処置

掌蹠膿疱症の悪化因子(原因)は大きく分けて、①病巣感染(歯、扁桃)、②喫煙、③金属アレルギーの3つがあります。これらの悪化因子をなくすことで、掌蹠膿疱症の症状が改善することがあります。ここでは、病巣感染(歯、扁桃)と金属アレルギーに対する処置について、その詳細とメリット・デメリットについて解説します。

闘病中の女性

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は手のひらや足の裏に膿疱ができる病気ですが、実はその悪化因子(原因)の一つは「口の中」にあるといわれています[1]。具体的には、扁桃腺や歯周組織に細菌が巣を作って増殖している(病巣がある)ことや、歯の詰め物に含まれる金属にアレルギーがあることが、掌蹠膿疱症の悪化因子となっている場合があります。ここでは、これらの悪化因子を取り除く処置について詳しく解説します。

扁桃腺に病巣がある場合の処置

扁桃腺に細菌が巣を作って増殖している(病巣がある)ことが、掌蹠膿疱症の発症や悪化に影響していると考えられる場合は、扁桃腺を手術で除去する手術(扁桃摘出術)が検討されます。

口腔内の解剖

扁桃腺には症状がないのに、なぜ手足に出るの?

扁桃腺は、口の中にいる細菌などから身体を守る免疫器官です。口の中にはさまざまな細菌がいますが、扁桃腺は普段、身体にとって悪い細菌は攻撃し、特に問題ない細菌はスルーしています。しかし、掌蹠膿疱症の患者では、このスルーする仕組みが破綻してしまい、問題ない菌に対して攻撃をしかけようとします。

しかし、この攻撃は扁桃腺でなされるわけではないので、扁桃腺そのものには目立った症状が出ないことがほとんどです[1]。その代わり、手のひらや足の裏の皮膚で攻撃が行われ、そのために膿疱ができてしまうのです。いわば、扁桃腺にいる細菌によって免疫システムが勘違いをしてしまって、別の場所を誤爆してしまったような状態です(詳しくは『掌蹠膿疱症の原因が皮膚じゃないって本当!?』をご覧ください)。

この状態を解消するひとつの手段が、扁桃腺を取り去ってしまうことです。そうすれば、攻撃命令が出ず、手足の症状が軽快することが期待できます。

扁桃腺を取ったら治るの?

では、扁桃腺を除去すれば必ず掌蹠膿疱症が治るのでしょうか。それはやってみないとわかりません[2]。

掌蹠膿疱症では前胸部を中心とした関節炎を起こすことが多いのですが、この症状も扁桃摘出術によって改善する場合もあるといわれています[1]。

それでは、扁桃腺を取る手術をしたら、どうなるのでしょうか。手術が終わった途端に症状がキレイさっぱり無くなるということではなく、数か月から1~2年くすぶりながら続き、次第に治っていくことが多いです。人によって異なりますが、扁桃腺が原因で掌蹠膿疱症になっていたならば、治療後1~3か月のうちに膿疱がほとんど出なくなり、もし出てもすぐに消えるようになることが多いようです。膿疱以外の皮膚症状(紅斑や鱗屑など)は1~2年かけて少しずつ目立たなくなってきます[1]。

扁桃摘出術のメリットとデメリット

このように、扁桃摘出術は掌蹠膿疱症における有効な治療法の一つなのですが、残念ながら無効もしくは効果不十分なケースもあるため、扁桃摘出術のメリットとデメリットを天秤にかけて判断しなければなりません。

一般的に、扁桃腺を除去するには30分から1時間程度の全身麻酔による手術が必要です。手術後は約1週間の入院が必要で、これにかかる費用は3割負担で10万円くらいです[4]。

この扁桃摘出術は、耳鼻科医が日常的に行っている手術であり、極めて安全性の高い手術です(死亡率は0.006%と報告されています)。ただし、手術で両側の扁桃腺を取ってしまいますので、その傷の痛みが1週間ほど続きます(痛み止めの薬が効きますので安心してください)。また、まれですが術後に出血してしまうことがあります(発生率は1.5~2.9%)[4]。

これらの条件と掌蹠膿疱症の重症度などを踏まえ、手術をしても掌蹠膿疱症が治らない可能性もあることを理解した上で、扁桃摘出術を受けるかどうかの判断をする必要があります。「手足の皮膚症状が治る可能性が少しでもあるなら手術したい」と考える人がいれば、「手術が怖いので別の治療法で何とかしたい」と考える人もいるでしょう。ぜひ、自分の希望を伝えて、主治医とよく相談して、あなたが納得する治療を選んでください。

扁桃摘出術を受けた方がいい人の特徴は?

扁桃腺を除去してみないと、掌蹠膿疱症が治るかどうかはわかりません。しかし、扁桃摘出術をすると症状が軽くなる可能性が高い人には特徴があります[1][2][4]。

  • 学童期に扁桃炎を繰り返していた
  • 扁桃炎や上気道炎になったときに皮膚の症状が悪化した
  • 扁桃腺に特徴的な所見(肥大、膿栓など)がある
  • 扁桃誘発試験や扁桃打消試験が陽性※
  • 禁煙できている(手術後の再発が防げる)

※これらの試験についての説明は『掌蹠膿疱症の原因が皮膚じゃないって本当!?』をご覧ください。

これらはあくまで目安ですので、この特徴に当てはまらなくても、術後に掌蹠膿疱症が改善することはもちろんあり得ます。参考程度にご覧ください。

歯周組織に病巣がある場合の処置

歯や歯茎に細菌が巣を作って増殖している(病巣がある)ことも、掌蹠膿疱症の悪化因子となります。歯の病気が悪化して多くの細菌が溜まるようになると、免疫が刺激され、勘違いして掌蹠膿疱症を起こすことがよくあります(詳しくは『掌蹠膿疱症の原因が皮膚じゃないって本当!?』をご覧ください)。

りんごと歯周病

歯の病気を治したら掌蹠膿疱症も治るの?

歯周病(歯肉炎、歯周炎)のように、歯や歯周組織に細菌が感染して巣食ってしまう病気の治療をすることで、80%程度の確率で掌蹠膿疱症が改善するといわれています[1]。歯周病は掌蹠膿疱症だけでなく、メタボリックシンドロームや動脈硬化によって発症する心筋梗塞や脳梗塞などのリスクになることがわかっています。この機会に、歯をしっかりキレイにしてしまいましょう。

歯周病の治療はどんなもの?

歯周病のもっとも大きな原因はプラーク(歯垢;細菌のかたまり)の蓄積です。このプラークをしっかり取り除くのが基本的な治療となります。具体的には、正しい歯磨き(ブラッシング)の仕方を学び、溜まった歯石を取り、虫歯の治療や噛み合わせの矯正などを行います。歯科にかかったときだけやればいいのではなく、患者自身が日常的にケアを続けることが大事です。

基本的な治療でも改善できない場合は、外科的な治療を行います。深くなりすぎた歯周ポケットを修正したり、歯を支える骨(歯槽骨)がなくなってしまった部分を補強したり、再生したりする治療です。症状がひどい場合は抜歯をするケースもあります。治療方法はいろいろあるので、歯科医と相談して決めていきましょう。

金属アレルギーがある場合の処置

そんなに多いわけではありませんが、金属アレルギーが原因で掌蹠膿疱症が発症・悪化してしまうケースがあります。原因となる金属の多くは、虫歯治療などで使われた歯の詰め物に含まれる金属です。これらの金属を除去することで掌蹠膿疱症の症状が明らかに改善した例が報告されています[5]。

歯科金属

金属アレルギーかどうかを調べるには?

金属アレルギーかどうかを調べるには、皮膚科で「パッチテスト」という検査を行います。一般的に入院する必要はなく、外来でできるテストで、結果が分かるまで数日かかります(このテストについて詳しくは『掌蹠膿疱症になぜ金属アレルギーが関係するの?』をご覧ください)。

金属アレルギーによる掌蹠膿疱症はそんなに多くなく、全体の数%です[1]。そのため、パッチテストは金属アレルギーの可能性が高そうな人だけを選んで行うことが多いようです。例えば、今までに装飾品や時計などでかぶれた経験がある人、歯の詰め物がいくつもある人、喫煙をする人、他の治療をしてもあまり効かない人などです[6]。

金属アレルギーだったらどうする?

歯科を受診し、原因となっている歯の詰め物を、金属を含まないものに変えるという方法があります。こうすることで掌蹠膿疱症の症状が改善するケースもありますが、この方法は患者の経済的・時間的負担が大きいため、最終手段として行われることが多いようです[7]。すなわち、皮膚科での外用療法や、耳鼻咽喉科での扁桃摘出術、歯科での歯周病治療などを行ってみて、それでもなかなか症状が改善しない場合にトライしてみるといった位置づけです。

参考文献

  1. [1]小林里実. 病巣感染と掌蹠膿疱症, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1036-1041
  2. [2]山本俊幸. 掌蹠膿疱症の臨床, Modern Physician 2015; 35(4): 552
  3. [3]藤城幹山ほか. 扁桃誘発試験を見直す, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1048-1051
  4. [4]高原 幹ほか. 扁桃と掌蹠膿疱症(耳鼻科の立場から), Visual Dermatology 2012; 11(10): 1042-1047
  5. [5]高橋槙一. 掌蹠膿疱症の病因と治療, 歯科学報 2008; 108(5): 431-436
  6. [6]鶴田京子ほか. 金属アレルギーと掌蹠膿疱症, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1052-1054
  7. [7]森山雅文ほか. 口腔扁平苔癬および掌蹠膿疱症の発症と金属アレルギーとの関連についての検討, 日本口腔外科学会雑誌 2012; 58(12): 718-722

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