掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症の皮膚症状を改善する治療薬(局所療法)

掌蹠膿疱症は手のひら(掌)や足の裏(蹠)に膿の入った水ぶくれ(膿疱)がたくさんできる病気です。この症状はどのすれば治るのでしょうか。残念ながら、掌蹠膿疱症には「これさえ使えば誰もが治る特効薬」はないので、多くの患者で効果が認められてきたいくつかの薬を組み合わせて治療を進めていくことになります。ここでは、掌蹠膿疱症の皮膚症状を改善するためによく使われる治療薬について解説します。

掌蹠膿疱症の外用治療

掌蹠膿疱症ではどんな治療をするの?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)で最もメジャーな治療法は「外用療法」です。皮膚の症状が出ている部分にステロイド外用薬やビタミンD外用薬の軟膏を塗るというもので、ほとんどの患者がこの治療を受けています。

掌蹠膿疱症の治療割合

上の表を見てください。これは、日本で掌蹠膿疱症と診断された患者(約13万6千人)を対象として、どんな治療を受けたことがあるのかを調査した結果です[1]。ステロイド外用をしている患者が約8割と最多で、次に多いのがビタミンD外用(約3割)、続いて光線療法(1割弱)といった状況です。これらは塗布(照射)した部分だけに効くので「局所療法」と呼ばれています。

以下、それぞれの治療法について詳しく解説していきます。なお、これら以外の治療法については、『掌蹠膿疱症のオプション治療(全身療法)』『掌蹠膿疱症の新たな治療薬「生物学的製剤」』『掌蹠膿疱症にビオチン治療や漢方薬は本当に効くの?』をご覧ください。

掌蹠膿疱症の局所療法(1)ステロイド外用薬

ステロイド外用薬による局所療法は、掌蹠膿疱症の治療のなかで最もスタンダードなものです。

上記の調査によると、掌蹠膿疱症の患者の約80%がこのステロイド外用薬を使って治療をしています。この調査では何らかの理由で治療をしていない患者も約15%いたので、治療を受けている患者に限れば「ほぼ全員がステロイド外用薬による局所療法を行っている」と捉えてもよさそうです。

どうしてステロイドを使うの?

ステロイドを使う理由は、皮膚で起きている炎症を止めるためです。

掌蹠膿疱症では手のひらや足の裏にたくさんの膿疱ができます。この膿疱の中には「好中球」と呼ばれる免疫細胞がたくさんいます。この好中球は、何らかの理由で「手足に敵がいる」と勘違いして集まってきたものです。

好中球の仕事は「細菌などの異物(敵)を食べて消化すること」です。この働きは身体にとって非常に重要なものなのですが、掌蹠膿疱症で皮膚症状が出ている場所には細菌がいないので、好中球は集まってきても活躍できません。かといって出撃命令は出ているので、戻ることもできません。このような状況を肉眼で見ると、皮膚に膿疱ができているように見えるのです。

※どうして好中球が集まってきてしまうのかは、『掌蹠膿疱症の原因が皮膚じゃないって本当!?』『最近わかってきた掌蹠膿疱症の病態メカニズム』をご覧ください。

説明が長くなりましたが、ステロイド薬には好中球が集まってくるのを防ぐ作用があります[2]。また好中球以外にもさまざまな免疫細胞が手足に集まってきて、敵がいると勘違いして戦いを始めようとします。これが「炎症」と呼ばれる状態で、ステロイド薬にはこの炎症を抑える作用があります。

いうなれば、ステロイドを塗ると停戦状態にすることができるということです。しかし、ステロイドは免疫細胞の勘違いの原因を解消することはできないので、塗るのを止めてしまうと、また闘争状態(=炎症)になってしまうため注意しましょう。

ステロイドって怖くないの?

ステロイド軟膏

「ステロイドは怖い薬」というイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。そのイメージだけで、掌蹠膿疱症のメインの治療法であるステロイドを拒否してしまうのであれば非常に残念なことです。どうして「怖い薬」というイメージが付いてしまったのかを簡単に解説します。

ステロイドは1950年代に登場し、その強い抗炎症作用から広く使われるようになりました。効果が高くて使いやすいため、安易に長期連用してしまう人が出てきて、なかには副作用が出てしまった人もいました。1990年代になるとこの副作用がマスコミなどで強調されるようになり、次第に「ステロイドを使ったから症状が悪化した」と誤解されるようになりました。この不安につけ込んで商売をする人まで現れて、この誤解が広がってしまったために、当時の一般市民の間で「ステロイド=怖い薬」というイメージが定着してしまったのです。

しかし、掌蹠膿疱症で手足に塗るステロイドは局所、すなわち塗った部分の皮膚にのみ作用するもので、よほど大量に長期にわたって使い続けない限り、副作用が起こることはありません。仮に副作用が起こったとしても、皮膚の細胞の増殖が抑制されたことによる皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)や、毛細血管の拡張(肉眼で細い血管が見える)が多く、ステロイドの使用を控えることで徐々に治っていくことが多いです[3]。

掌蹠膿疱症は数年にわたって付き合っていく病気ですので、ステロイドを塗り続けることに不安があるかもしれません。掌蹠膿疱症は良くなったり悪くなったりを繰り返す病気なので、皮膚科医は皮膚の様子を見ながら外用薬を調整してくれます。心配なようなら遠慮せず主治医に相談してください。

掌蹠膿疱症の局所療法(2)ビタミンD外用薬

ステロイド外用薬に次いで、掌蹠膿疱症の患者によく処方されているのがビタミンD外用薬(マキサカルシトール、タカルシトール)です。

ビタミンD外用薬には、敵がいると勘違いした好中球が手足などに集まってくるのを防ぐ働きがあります。好中球が集まってこないので、膿疱ができにくくなります。症状が強いときにはステロイド外用薬とビタミンD外用薬の両方を併用し、症状が軽くなってきたらビタミンD外用薬だけにするといったような使い分けをすることもあります[4]。

なお、「皮膚にビタミンDを塗っているのだから、口からもサプリでビタミンDを摂ったらもっと効く」と考える人がいるかもしれませんが、ビタミンDが過剰に体内に入ると高カルシウム血症になってしまう可能性があります。もしビタミンDやカルシウムの健康食品を摂っているようなら、医師に伝えるようにしてください。

掌蹠膿疱症の局所療法(3)光線療法

ここまでに紹介したステロイド外用やビタミンD外用を行っても、掌蹠膿疱症の症状が思ったように改善しない場合があります。そういうときには「光線療法」が行われることがあります。

ここでいう光線とは、紫外線のことです。近年よく使われているのは「エキシマライト」と呼ばれる医療機器で、308mnをピークとした紫外線を照射します。このエキシマライトは、特定の部位(ターゲット)を狙って照射でき、正常な皮膚へのムダな照射を最低限に抑えられることが長所です。掌蹠膿疱症だけでなく、乾癬や白斑など他の皮膚病にも広く使われています[5]。

このエキシマライトを掌蹠膿疱症の症状が出ている皮膚に照射すると、勘違いして戦闘状態になっている免疫細胞をなだめる役割をもつ細胞(制御性T細胞;Treg)が増え、皮膚症状が改善したという研究結果が出ています[6]。

このように掌蹠膿疱症ではさまざまな治療の選択肢があります。掌蹠膿疱症は年単位で付き合わなくてはならない病気ですが、状況に合わせて適切な治療法を組み合わせることで、症状を抑えて日常生活を送ることができるようになります。自分一人で悩まずに、心配なことがあればぜひ医師に相談してください。

参考文献

  1. [1]Kubota K et al.Epidemiology of psoriasis and palmoplantar pustulosis: a nationwide study using the Japanese national claims database.BMJ Open 2015; 14;5(1):e006450
  2. [2]馬嶋正隆. 免疫・炎症系. 標準薬理学. 第7版. 医学書院 2015; 581
  3. [3]大槻マミ太郎. 治療. 標準皮膚科学. 第10版. 医学書院 2013; 81-83
  4. [4]大久保ゆかり. ステロイドとビタミンD3外用薬, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1066-1067
  5. [5]森田明理ほか. 掌蹠膿疱症に対する光線療法, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1073-1074
  6. [6]Furuhashi T et al. Efficacy of excimer light therapy (308nm) for palmoplantar pustulosis with the induction of circulating regulatory T cells. Exp Dermatol. 2011;20(9):768-70.

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