掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症のオプション治療(全身療法)

掌蹠膿疱症で行われるメインの治療法は、ステロイドやビタミンDの外用療法です。この外用療法がよく効いて、症状が消えていく人はたくさんいます。しかし、なかには外用療法だけでは期待したような効果が得られないために、飲み薬や注射薬を追加するケースもあります。ここでは、そんなときに追加される全身療法(オプション治療)について解説します。

掌蹠膿疱症の全身療法

掌蹠膿疱症の外用療法が効かない場合は?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の治療は、大きく「局所療法」と「全身療法」に分けられます。

局所療法
ステロイド外用薬
ビタミンD外用薬
光線療法

※局所療法は塗布(照射)した部分(局所)だけに効くのが特徴。詳しくは『掌蹠膿疱症の皮膚症状を改善する治療薬(局所療法)』をご覧ください

全身療法
抗菌薬
エトレチナート(ビタミンA誘導体)
免疫抑制薬(シクロスポリン、アプレミラスト、メトトレキサートなど)
生物学的製剤(インフリキシマブ、グセルクマブなど)

一般的にはまず局所療法を行い、それでも症状がコントロールできない場合に全身療法を検討します。実際に、下の表を見ていただくと、患者の約8割は局所療法を受けています[1]。全身療法は、局所療法を行いつつ、必要に応じて追加していくオプション的な位置づけの治療法です。

掌蹠膿疱症の治療割合

ここでは、全身療法のなかでも飲み薬として処方されることの多い、抗菌薬、エトレチナート、免疫抑制薬などについて解説します。

掌蹠膿疱症の全身療法(1)抗菌薬

掌蹠膿疱症の患者の多くでは、細菌が歯周組織や扁桃腺などに巣食っていることが原因(悪化因子)になっています[2]。歯周病の治療を行ったり、扁桃腺を取り去る手術を行ったりして細菌を減らせば、掌蹠膿疱症の症状が軽減する人が多くいらっしゃいます。

この「細菌を減らす」という観点から、抗菌薬(抗生物質)が使われることがあります。特に細菌がどこに巣食っているのかよく分からない場合には、全身に抗菌効果を発揮する抗菌薬(ミノサイクリンやマクロライド系抗菌薬)が治療の選択肢となります[3]。

特に、マクロライド系抗菌薬の一種であるロキシスロマイシンという薬には、抗菌作用に加えて、炎症を抑える効果もあります。膿疱をつくる原因となる免疫細胞(好中球)の働きを抑えたり、それが手足に集まってくるのを防いだりすると考えられています。炎症によるかゆみを止める効果も期待できます[3]。

掌蹠膿疱症の全身療法(2)エトレチナート

エトレチナートはビタミンAとよく似た化学構造をもつ薬です。掌蹠膿疱症では表皮を作り出す角化細胞が変性しており、角質が異常蓄積したり:鱗屑(りんせつ)、薄く剥がれやすい状態:落屑(らくせつ)になっています。エトレチナートを服用することで、正常な表皮を作り出せるようになると考えられています。

ただし、エトレチナートは副作用の多い薬なので、服用には注意が必要です。胎児に奇形を引き起こす(催奇形性)があるので、妊娠中の人や近い将来に妊娠することを希望している人には処方できません。また、ビタミンAを含むサプリメントと併用すると、ビタミンAが過剰になってしまい、頭痛や嘔吐、目のかすみなどの症状が出てしまいます。この他にもいくつかの注意点がありますので、エトレチナートの服用にあたっては、医師や薬剤師の説明をよく聞いて、正しく飲むようにしてください[4]。

掌蹠膿疱症の全身療法(3)免疫抑制薬

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏に膿疱ができる病気ですが、その膿疱の中には免疫細胞(主に好中球)がいるだけで、細菌がいるわけではありません(そのため「無菌性膿疱」と呼ばれています)。これは、身体の免疫システムが勘違いをして出撃命令を出してしまっていて、免疫応答が異常に過剰になっているという状態です。

このような状態を鎮めるために、シクロスポリン、アプレミラスト、メトトレキサートといった免疫を抑制する作用を持った薬を使うことがあります(掌蹠膿疱症としては保険適用外)。掌蹠膿疱症の皮膚症状に加え、なかなか改善しない骨関節症状にも有効であったという報告があります[5]。

しかし、免疫を抑えるということは、感染症から身を守りづらくなる、という側面が出てきます。また、腎機能や肝機能に悪影響を及ぼす可能性もあるので、定期的に検査をしてチェックをする必要があります。

なお、近年では免疫システムに働きかける新たな治療法として生物学的製剤(点滴、注射)という薬も使われはじめています。詳しくは『掌蹠膿疱症の新たな治療薬「生物学的製剤」(グセルクマブなど)』をご覧ください。

掌蹠膿疱症の全身療法(4)その他

この他にも、掌蹠膿疱症の局所療法(外用療法、光線療法)を併用して使用される飲み薬があります。

皮膚のかゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が使われます。これはかゆみを引き起こす物質(ヒスタミンなど)の産生や作用を抑えることで、かゆみを止めます。掌蹠膿疱症だけでなく、花粉症や蕁麻疹など、かゆみを伴う多くの病気で広く使用されている非常にメジャーな薬です。昔は眠気が問題になることがありましたが、現在よく使われている新しい薬ではあまり眠気が出ないように工夫されています。

また、掌蹠膿疱症の患者の約1割に、前胸部を中心とした骨関節炎が起こることが知られています[6]。腫れて強く痛んだり、肩や腕が動かしにくくなったりして日常生活に支障をきたすこともあります。このようなときは、痛み止めとして非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)などが処方されます[5]。

なお、掌蹠膿疱症の治療としてビオチン治療が行われることがあります。詳しくは『掌蹠膿疱症にビオチン治療や漢方薬は本当に効くの?』をご覧ください。

参考文献

  1. [1]Kubota K et al.Epidemiology of psoriasis and palmoplantar pustulosis: a nationwide study using the Japanese national claims database.BMJ Open 2015; 14;5(1):e006450
  2. [2]小林里実. 病巣感染と掌蹠膿疱症, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1036-1041
  3. [3]戸倉新樹ほか. ロキシスロマイシン内服療法, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1071-1072
  4. [4]中外製薬. チガソンを服用される患者さんへ, チガソンカプセル 患者さん指導資料
  5. [5]葉山惟大. 膿疱性骨関節炎(PAO):シクロスポリン, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1084-1085
  6. [6]大久保ゆかり. 経過中注意すべき合併症:2)膿疱性関節炎,胸鎖関節炎(SAPHO症候群)の臨床と診断, Visual Dermatology 2012; 11(10): 1030-1031

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