掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症にビオチン治療や漢方薬は本当に効くの?

掌蹠膿疱症をどうにか治せないかとウェブなどで調べると、「ビオチン治療」や「漢方薬」という選択肢を目にすることがあります。この治療はどのくらい効くのでしょうか。ここでは、掌蹠膿疱症の治療法におけるビオチン治療や漢方薬の位置づけを理解して、適切な治療を選ぶための知識を解説します。

漢方薬

掌蹠膿疱症におけるビオチン治療や漢方薬の位置づけは?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)におけるビオチン治療や漢方薬は、標準的な治療(ステロイドやビタミンDの外用療法、光線療法など)が効かなかった場合の「次の手」として使われてきました。

かつて、掌蹠膿疱症がどうして発症するのかについては、よくわかっていませんでした。どうも自己免疫(本来は敵ではないものを免疫が敵と勘違いして攻撃すること)が関わっているようなので、免疫を抑える作用のある薬や角質層を正常化させる薬など、さまざまな薬で試行錯誤してきました。そのなかで、ビオチンや漢方薬も試されてきたという経緯があります。

しかし近年では、免疫学や生命科学、医学の発展により発症メカニズムの理解が進み、より効果的な「次の手」(=生物学的製剤)が開発されてきました。掌蹠膿疱症の治療選択肢の幅は広がってきているのです。

※標準的な治療については『掌蹠膿疱症の皮膚症状を改善する治療薬(局所療法)』を、「次の手」については『掌蹠膿疱症のオプション治療(全身療法)』『掌蹠膿疱症の新たな治療薬「生物学的製剤」(グセルクマブなど)』をご覧ください。

ここでは、いくつかある掌蹠膿疱症の「次の手」のなかでも、昔から試されてきた方法である「ビオチン治療」について解説します。

掌蹠膿疱症のビオチン治療って?

掌蹠膿疱症のビオチン治療が提唱されたのは、今から30年ほど前です[1]。

ビオチンはビタミンB群の一種で、これが欠乏すると皮膚が炎症を起こしてガサガサになったり、舌に炎症が起こったり、食欲不振、吐き気などが起こるといわれています[2]。掌蹠膿疱症の患者の血中ではビオチン濃度が低いことがわかり、ビオチンを補充する治療法が考え出されました[1]。

どんな治療法?

掌蹠膿疱症のビオチン治療では、1日あたり4~6mgのビオチンを内服します[3]。健康な人が1日に摂取すべき目安量が0.05mgなので[2]、かなり多くの量を摂取することになります。

どのくらい効く?

標準的な治療(ステロイドやビタミンDの外用療法など)と併用してビオチン治療を行った30人の研究報告があります。治療開始後3か月もしくは6か月で効果を調べたところ、掌蹠膿疱症の重症度スコアの改善率が90%以上であったのは10人(33%)で、70%以上の改善率であったのは24人(80%)でした[3]。

この研究では、ビオチン治療を受けていない人(プラセボ群)を設定していませんので、研究の質(エビデンスレベル)は高くありません。また、掌蹠膿疱症は良くなったり悪くなったりを繰り返す病気であり、手は3~6か月、足は6か月~1年程度でいったん症状が落ち着くといわれています[4]。そのため、この研究結果を見るときは、治療に関係なく自然に良くなった可能性も考慮する必要があります。

ビオチン治療をすべき?

ビオチン治療の有効性を証明するエビデンスは少なく、効果が現れるまで時間がかかりますし、前述したような懸念点もあります。とはいえ、安価で副作用も少ない方法なので、標準的な治療と併用することを前提に、主治医と相談して試してみてもいいかもしれません。掌蹠膿疱症では他にも治療の選択肢がありますので、それらも視野に入れて検討してみてください。

今の治療が効かなかったら、「次の手」をどう選ぶべき?

もし掌蹠膿疱症が標準的な治療で思うように治らなかった場合、がっかりしてしまうのは当然のことです。ですが、この段階で諦めたり、もう医師の言うことは信用しないと思ったりしないでほしいのです。どんな病気でも、重症度や体質によって、一般的な治療だけではうまくいかないことがあります。そんな患者にも効く薬を作るために、医学は日々進歩しています。

そんな医学の進歩の恩恵にあずかるためにも、「次の手」を検討するときは一人で悩まず、最新情報を知っている専門医と一緒に考えることが大事です。「他に何か良い治療法はありませんか?」と聞けば、いくつかの選択肢を示してくれるはずです。

また、自分で調べて、試してみたい治療があるなら遠慮なく言ってください。かつては医師が治療法を決めて、患者はそれに従うという形が主流でしたが、現在では患者の意見や希望などを曲者んで、お互いに相談して決めるのが理想の医療とされています。患者本人が納得して治療を受けることが大事です。

参考文献

  1. [1]高橋槙一. 掌蹠膿疱症の病因と治療, 歯科学報 2008; 108(5): 431-436
  2. [2]厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2015
  3. [3]橋本喜夫ほか. ビオチンを長期投与した掌蹠膿疱症30例の臨床経過-特にPPPASIによる検討-, 旭川厚生病院医誌 2013: 3-9
  4. [4]山本俊幸. 掌蹠膿疱症の臨床, Modern Physician 2015; 35(4): 552

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