掌蹠膿疱症を学ぶ
2018.09.03

掌蹠膿疱症が治るまでに自分でできるセルフケア

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏にできる皮膚症状や関節炎の痛みなどによって、生活の質(quality of life;QOL)が低下しやすい病気です。治るまでの間、どんなことに気をつけて日常生活を送ればいいでしょうか。また、どのような心構えで治療に臨んだらいいでしょうか。2人の皮膚科専門医からお話を伺いました。

監修医師

監修 掌蹠膿疱症お悩みホットライン編集部

QOLを下げずに掌蹠膿疱症と付き合う

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、その病名が示す通り、手のひら(掌)と足の裏(蹠)を中心に膿疱などの皮膚症状が出る病気です。手のひらは人の目に触れやすい部位ですし、日常的によく使う部位ですので、仕事や家事、趣味などの活動に支障をきたすことがあります。また、足の裏の症状が強い場合は痛みで歩くのもつらかったり、骨関節の痛みに悩まされたりする人もいます。このように、掌蹠膿疱症は患者の生活の質(QOL)は下げてしまう病気の一つなのです。

掌蹠膿疱症の患者の悩みは?

東京医科大学病院皮膚科が行った調査によると、掌蹠膿疱症の患者は下記のようなことで悩んでいるそうです[1]。

  • 皮膚症状の見た目が気になる
  • 皮膚症状がうっとうしい
  • 皮膚症状のために日常生活に支障がある
  • 皮膚症状のために仕事や余暇を楽しむことが難しい
  • 皮膚のかゆみがつらい
  • 元気がなく疲れを感じる
  • 夜中に目を覚ますことがある
  • いつもストレスを感じる
  • 何かをするのに余計に時間がかかる
  • 人生にまったく望みを失ったと感じたことがある

このように生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす掌蹠膿疱症と、どのように付き合っていくべきなのでしょうか?北海道札幌市にある桑園オリーブ皮膚科クリニック院長の米田明弘先生と、東京都立川市にある立川皮膚科クリニック院長の伊東秀記先生の2名の皮膚科専門医からアドバイスをいただきました。

皮膚科専門医からのアドバイス

桑園オリーブ皮膚科クリニック院長 米田明弘先生

写真:桑園オリーブ皮膚科クリニック院長 米田明弘先生

米田明弘先生によると、皮膚症状が目に付きやすいことや、かゆみや痛みの自覚症状に悩んでいる掌蹠膿疱症の患者が多いそうです。特に関節炎(前胸部に多い)を併発した患者では、強い関節の痛みが出ることがあります。皮膚症状は良くなったのに関節の痛みだけが続いてしまうという人もいて、なかなか治療に苦慮することもあるそうです。

生活上の注意点としては、なるべく皮膚に刺激を与えないような服装などを心がけることです。掌蹠膿疱症では、物理的な刺激(靴、下着のゴムなどによる圧迫や擦れ)が加わった皮膚の部分に症状が現れる「ケブネル(ケブナー)現象」が起こることがあるからです。痛い部分があれば軟膏を付けてガーゼで保護するといった方法もありますので、主治医に相談してみましょう。

立川皮膚科クリニック院長 伊東秀記先生

写真:立川皮膚科クリニック院長 伊東秀記先生

伊東秀記先生は、手に症状が出ていると炊事・洗濯による刺激で症状が悪化することがあるので気をつけてほしいとアドバイスしています。洗剤や消毒剤による二次的な炎症を避けるために、家事などをする際には手袋をして保護することが重要です。

また、「うつるかどうか」を気にしている患者が多いとのこと。例えば足の症状を見て、水虫になってしまったのではないかと心配して受診される方が多いそうです。掌蹠膿疱症は決してうつる病気ではありませんが、本当に掌蹠膿疱症なのかどうかは皮膚科医にきちんと見分けてもらう必要があります。

この機会にぜひ禁煙を!

米田先生と伊東先生の両名が口を揃えて言っていたのは「禁煙すること」です。

掌蹠膿疱症は未だによく分かっていない病気ですが、その発症にタバコが関わっていることはよく知られています。特に長年にわたり喫煙しているヘビースモーカーの女性が多く、禁煙に対して強い抵抗感があるような患者が少なくないようです。

今日タバコを吸うのを止めたら、明日には見違えるように掌蹠膿疱症が治る――ということは残念ながらありませんが、禁煙によって月単位で症状が軽くなっていくことが期待できます。すぐにタバコを止められないようなら、吸う本数を減らすことから始めてみましょう。サポートが必要なら、禁煙外来に行ってみるのもよい手です。

しかし実際には、なかなか禁煙できない患者が多いそうです。それならばなおさら、外用薬などによる治療を頑張らねばなりませんね。

皮膚科だけでなく歯科も受診しよう

掌蹠膿疱症はタバコによる刺激や細菌の持続的な感染などによる「慢性炎症」が関係していると考えられています。

米田先生は、皮膚科医による症状のコントロールに加えて、歯科医による専門的な歯のケアや治療を行うことをおすすめしています。歯周病や歯の根元に細菌の慢性感染(病巣)があることが掌蹠膿疱症の発症や悪化に関連していることが分かっています。この病巣をなくすことで根本的な原因が消え、掌蹠膿疱症が完治する人もなかにはいるそうです。

普段から行っているかかりつけの歯科があれば、掌蹠膿疱症の話をして対応を検討してもらいましょう。特になければ主治医に相談してみるのも一手です。よい歯科医を紹介してくれるかもしれません。

掌蹠膿疱症の治療は変わってきている

伊東先生は「現在は治療の選択肢が広がったため、昔の患者と今の患者が置かれている環境はまったく異なります」「100%完治するわけではないので、無理に患者負担の大きい扁桃腺の手術をしたり、歯の金属を取り替えたりしなくてもいいかもしれません」と患者に説明しています。

掌蹠膿疱症は今でもはっきりと分かっていない病気ではありますが、昔に比べるとそのメカニズムの解明が進み、有用な治療法も増えてきました。例えば、エキシマライトを用いた光線(紫外線)療法や免疫抑制薬(シクロスポリンやアプレミラストなど)といった比較的新しい治療が、全国の皮膚科クリニックで行える時代になっています。

伊東先生は、シクロスポリンで皮疹のコントロールをしたり、アプレミラストなどの内服療法(保険適応外)で皮膚症状を抑えつつ、光線療法(エキシマライト)を併用したりする治療法を多くの患者に行っています。皮膚の症状がある部位に紫外線を照射することで、炎症を抑えることができます。安全のために、最初は低いエネルギー量の照射から始めて、少しずつエネルギー量を高くしていきます。一定のエネルギー量に達すると多くの患者で症状の改善が見られ、再発しにくくなっている印象があるそうです。

このような経験を踏まえ、伊東先生は「掌蹠膿疱症は、根気強く治療を行ってもらえれば、今では症状のコントロールや完治が可能な病気になりつつある」と言います。

また、米田先生は「患者によっては、その人に合う治療法を探すのに苦労することがあります。治療の幅が広がったとはいえ、まだ掌蹠膿疱症はすぐに治るとは言えない状況です。治療には時間がかかる病気であることをご理解いただき、主治医とともに腰を据えて立ち向かっていただきたい」とアドバイスしてくれました。

掌蹠膿疱症の治療は日進月歩。昔からあって多くの患者が試してきた治療法もあれば、今後に期待のかかる最新の治療法もあります。患者としては信頼できる専門医としっかり相談したうえで、納得して治療に取り組みたいものです。焦らず、じっくりと治療していきましょう。

参考文献

  1. [1]大久保ゆかり. 掌蹠膿疱症はいかに患者のQOLを低下させるか? Visual Dermatology 2012; 11(10): 1032-1035

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